PERFECT DAYS
ヴィム・ヴェンダース 脚本・監督作品/脚本 高崎卓馬
役所広司/柄本時生/中野有紗/アオイヤマダ/麻生祐未/石川さゆり/田中泯/安藤玉恵/三浦友和
’23/日=独/2h4分
山形フォーラム
令和6年2月3日
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山は、静かに淡々と日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働く。その毎日は繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らしたー。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダース。彼が長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描く。
■第76回カンヌ国際映画祭 男優賞受賞 ■第96回アカデミー賞国際長編映画賞 ノミネート
東京の公園にあるトイレはそれぞれに意匠に富んでいる。
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。東京渋谷の公衆トイレの清掃員、平山は押上の古いアパートで一人暮らしている。その日々はきわめて規則正しく、同じことの繰り返しのなかに身を置いているように見えた。ルーティンは孤独を遠ざけるものかもしれない。けれど男のそれはどこか違ってみえた。夜が明ける前に近所の老女が掃除する竹ぼうきの音が響く。それが聞こえると男はすっと目をあける。少しのあいだ天井をみつめる。おもむろに起きあがると薄い布団を畳み、歯を磨き、髭を整え、清掃のユニフォームに身をつつむ。車のキーと小銭とガラケーをいつものようにポケットにしまい部屋をでる。ドアをあけて空をみる。スカイツリーをみているのか。光を見ているのかはわからない。缶コーヒーを買うと手作りの掃除道具をぎっしり積んだ青い軽にのって仕事へむかう。いつもの角でカセットテープを押し込む。カーステレオから流れてくるのはThe Animals のThe House of Rising Sun。いくつもの風変わりなトイレを掃除してまわる。いつもの公園の同じベンチでコンビニで買ったサンドイッチを食べ、木漏れ日の写真をフィルムカメラで撮る。その日はひょっとすると声をひとつも出していないかもしれない。掃除を終えると夕方にはあのアパートに戻る。自転車に乗り換えて銭湯へゆき、いつもの地下の居酒屋でいつものメニューを頼み、そして寝落ちするまで本を読む。そしてまた竹ぼうきの音で目をさます。男の人生は木のようだった。いつも同じ場所にいて動かない。同僚のタカシのいい加減さをどうして憎めないのか。同僚のタカシは何かに付け物事を十段階の幾つと表現する。いつものホームレスの男が気になる。清掃のあいまに見つける木漏れ日が好きだ。フィルムを現像してくれるこの店はいつまであるだろうか。銭湯で出会う老人が愛おしい。古本屋の女性の的確な書評を聞くのも悪くない。日曜は作業着をコインランドリーで洗濯をすませ、向かいの居酒屋に寄る。居酒屋のママの呟きが気になる。今日はあいにくの雨だ。それでも予定は変えない。そんな彼の日々に思いがけない出来事が起きる。
そしてそれは彼の今を小さく揺らした。
平山のアパートに少女が訪ね、おじさんと言った。少女は平山の妹の娘だった。母親と喧嘩して家出して「家出した時は伯父さんのところに行くと決めていた」と言う。平山は少女を二階の和室に泊め自分は一階の台所で毛布にくるまって眠る。少女を起こさないようにして集めた新芽の鉢植えに霧吹きで水を掛けようとすると目覚めた少女は平山の仕事に一緒についてゆくと言う。
平山がいつも昼食を取る公園のベンチの隣のベンチにOLが座り昼食を取るようになる。
同僚のタカシと仕事をしているとタカシの元に若い女性が訪ねてくる。タカシは早めに仕事を切り上げて一緒に女性の店に向かうと言うがタカシのバイクが動かなくなって、仕方なく平山の仕事用の軽自動車を貸してくれと言い、平山は仕方なくタカシに運転させ自分は清掃用具の間の窮屈な空間に収まった。女性は平山のカセットテープのコレクションに興味を持った。女性は急に気が変わってタカシとは一緒に行かないと言って車を降りてしまった。タカシはお金がないと女にもモテないと平山のカセットテープのコレクションに目を付け売り払って現金を得ようとするが、結局タカシは女性にフラれその反動で仕事を辞めてしまった。平山の担当地区は平山一人では回りきれず、上司に現状を訴えると次の日に仕事の出来そうな女性がシフトに入った。
平山は洗面台の隙間に三並べのマス目の紙を見つけ最初ゴミとして捨てようとしたが気になって三並に乗ってゲームを進めることにした。
銭湯帰りの地下の居酒屋が大変混んでいた。
日曜日の居酒屋がまだ空いておらずコインランドリーで時間を潰す。ママが男性と現れママが店の中で男性と抱きついていた。平山はコンビニで缶チューハイとタバコを買って堤防のベンチで飲み始めるとさっきの男性が現れた。男性はママの元夫だと良い、末期癌で別れたママに会いたくなったと言う。
平山の日常はいつものように進んでいる。