タンゴ・イン・ザ・ダーク
サクラ・ヒロ[著]/DAZAI太宰治賞2017/筑摩書房
第33回太宰治賞 受賞作
「僕」は「K」と結婚して三年。妻の「K」はある日「火傷したの天ぷらを揚げているときに」と地下室に籠って出てこなくなった。僕は市役所のこどこ課で働いている。富士田さんと言う非常勤の茶髪の若い女性の栄養士と組んで行動することが多い。フルートとギターを趣味に持つ夫妻は地下の防音措置が施された音楽室が気に入りこの中住宅を手に入れた。「K」の名は正式名はアルファベットの「K」、父親がなるべく意味のない清潔な名前ということで「K」を選んだ。流石に戸籍ではKは使えないから、漢字の「恵」を当てることにした。さらに予期していなかった双子で「惠」と「恵」になった。「K」が地下に籠ってからの連絡方法はLINEだけになった。初めは二、三日だと思っていたが役所の仕事も忙しくそのままにしていたら随分と長くなってしまった。「K」とあったのは合コンだった。特に目立った存在ではなかったが付き合うようになって結婚した。最近は仕事の忙しさもありすれ違いの生活をしていたが、こんな生活になったのは子供を死産してからだ。元々子供はできないと期待していなかったがそれから「K」は妊活をしていたが特に協力をしてこなかった。役所では火野が何かと何かと絡んでくる。火野は自宅で「K」とあったことがある。いつも夜遅く帰ってくると食卓には夕食が用意てある。最近は天ぷらものが多い。「K」の顔が思い出せなくなっている。どうしても会いたいと思いLINEで交渉をする。「K」が開発したアプリでランクが十番位に入ったという。「K」はインターネット系の企業に勤めていたからソフト開発ができた。調べてみると「K」が開発した「オルフェス」というソフトは人気があり世界的なヒットとなっていた。「オルフェス」は反射神経だけでも経験だけでもランクアップをすることが難しく、夜な夜な「オルフゥウス」をして昼間こども課の仕事にミスが目立つようになる。上司も心配し定時で帰れるようになるが火野の誘いで飲んでばかりで早く帰ることはない。「オルフェス」のランクは上がらずに交渉し、全く明かりを点けずに地下室で会うことを了承されるが、全く明かりがなくては「K」の顔をみることができない。夜更かしが過ぎ仕事中に気分が悪くなり富士田さんの運転でラブホテルで休憩し一線を超えてしまい、富士田さんに「K」の面影を重ねる。気分が悪く早引けすると妻がリビングに居たがそれは妻ではなく「K」の双子の妹だった。「K」の幼い頃の話を聞き、昔のようにフルートを持ち出し吹いてみると「K」が合わせてギターを重ねる。地下室で演奏を重ねミスをすると何かが飛んできて鋭い痛みを感じる。「K」の求めで次々に難しい曲を饗宴しミスの度に痛みを感じそれが快感なのではないかと思えてくる。「K」はリビングで会った妹は変装した「K」だったと言う。「K」と火野との間を疑った頃火野が地下室に現れ火野をギターで殴ってしまった。「K」の指示で火野を車に乗せ郊外に向かう「K」は山の中で車から居なくなってしまった。